kokodamのピアノ日記 vol.5

海と森が見える家に住み、ピアノを弾いています。日々思うこと、感じたことなど、綴っていきます。

「氷壁」と徳澤園

小説「氷壁」、今、読み終わりました。
徳澤園に泊まった一泊目の夜から読み始め、涸沢ヒュッテ、穂高岳山荘は荷物がなかったので読めなかったけど、徳沢に下りてまた徳澤園での二泊目の夜に読み、今やっと読み終わりました。

基になっているのは「ナイロンザイル事件」という、昭和30年1月に実際に前穂の東壁で起きた事件ですが、井上靖がそれを小説として再構築し、一人の若き登山家の生き様と、彼と二人の女性との間の美しい恋愛の物語を、それぞれの人間の深奥に迫る心理描写とともに描いています。


「徳澤園」は、主人公である登山家「魚津恭太」と結婚を約束した相手「かおる」が、魚津を待っていた宿。
魚津は結局、穂高滝谷沢登高中、落石を受け死亡、かおるのところには戻らないのですが…


この徳澤園、とても素敵な宿でした。
上高地から2時間、自分の足で歩かなければ辿りつけないところ。
車も通らない、携帯電話もつながらない。電気は自家発電で消灯時間がある。そんな不便なところ。

けれど、高い山々と森の緑に囲まれた静かなその宿は、とても心の落ち着く場所でした。

↓お部屋もとっても素敵。

↓宿のあちこちに、花が生けられ、素敵な骨董家具とともに置かれています。


何よりうれしかったのは、宿の方々の、温かいおもてなし。
スタッフの方々、皆さんとてもお綺麗で、温かいんです。
それがなんというか…、奥の方から出ている美しさ。
「きっと女将の躾が厳しいに違いない…」とみましたが(←お会いしてもいないのに(笑)、私の勝手な想像です。ゴメンナサイ。)、それ以上にやはりこの自然の美しさが、彼女たちをあんなに美しく眩しく輝かせているんだろうな〜、と、思ったのでした。


↓お食事もとても美味しかったです。一泊目と二泊目ではメニューも変わって。
自家菜園で丁寧に作られた野菜、こだわりのチーズ、地元の主婦の方々が作られた豆腐と味噌…。
どれも本当に美味しいものばかりで、楽しませていただきました。
(ちなみにお魚は、岩魚のお刺身!初めていただきました。)

私、この徳澤園のあり方には、本当に心を打たれまして。
本当に良いもの、守っていってもらいたいもの。そういうものを感じました。

明治18年に牧場が開かれ、そこに建てられた牧場小屋が前身の、歴史ある宿なわけですが。
徳澤園のあゆみが書かれた本を読んでいたら、このオアシスに、吹雪の中、すぐ近くまで来ながら、徳澤園が発見できず、凍死した人もあったと。そういう、美しくもあり厳しい自然とともにある宿は、長い歴史を受け止めながら、これだけのものを提供しながら決して奢らず、営利に走るわけでもなく、すごく謙虚に、そこにある気がしました。


「また、訪れたい。」そんな思いを強く持った、宿でした。



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