kokodamのピアノ日記 vol.5

海と森が見える家に住み、ピアノを弾いています。日々思うこと、感じたことなど、綴っていきます。

三宅麻美先生のリサイタルに行ってきました♪

お世話になっているピアノの師匠・三宅麻美先生のリサイタルが、銀座・王子ホールで開かれ、行ってきました。
私、コロナで10ヶ月ぶり(!)の東京でした。

このコロナ禍にあって、さらなる進化(深化)を遂げている師匠の姿に、ただただ感嘆するばかり・・・。


「浪漫の花束~色とりどりの性格的小品とドイツ・リートの世界~」と名付けられたシリーズ。第1回「ベートーヴェン 生誕250年」の今回は、誰もが知っているピアノソナタ「月光」で始まりました。
・・・第3楽章、鳥肌が立ちました。あまりに有名なこの曲、これまでどれだけのピアニストの演奏を聴いたか分かりませんが、こんなに鳥肌が立ったのは、はじめてでした。その理由は、第2楽章にあったかもしれません。まるで「言葉」が聞こえてくるかのような、小さな物語のような、今までに聴いた中でもっとも愛らしい、第2楽章。そして続く、第3楽章。疾走する暗闇、そこに幻想的な光が、めくるめく変化して。絶妙な緩急。「あっ」という間に終わってしまった・・・。


「6つのバガテル」作品126も、素晴らしかった。ベートーヴェン最後のピアノ曲
それぞれが独特の個性を持つ小品たちなのに、6曲連なると、不思議とひとつの楕円形の中にきれいにおさまるような。ひとつの小宇宙を形作っているかのような。ベートーヴェン、「何か」が見えていたのかな?と・・・。
神様に祝福された演奏でした。ベートーヴェンピアノソナタ全曲演奏を終え、長大な「ディアベリ変奏曲」を弾き遂げた、そのような者のみが到達しうる境地、なんだろうな~、と。


後半は、バリトン・三塚至さんとの共演。
「遙かなる恋人に寄す」作品98。美しい自然の景色、小川の流れ、西風、空や雲。小鳥のさえずり、色とりどりの花々。舞台の背景となる美しい景色が、ピアノの音で色彩豊かに紡ぎ出され、その上を、男声がのびやかに感情を歌い上げ・・・。6曲通して、一冊の絵本が出来上がったような。

バリトンとの共演で一番心に残ったのは、アンコールで演奏された、「あきらめ」WoO149です。
音の空白は、透明な空気。純度の高い、幼子のような、きよらかな音。わずかに温かな、灯。
嵐のあと、雨ですべてが洗い流され残されたごく小さなしずくに、少しだけ光が差したような。・・・涙で洗い流されたあとの心の風景は、そんな景色と似ているのかな、と思いました。


もう一度聴きたい、ずっと聴いていたい。
そう思っても、叶わないのが、音楽。  

だからこそ、この空間にいられたこと、この音を共有できたことに、感謝です。

f:id:kokodam:20201103180030j:plain:w400




にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村